校正と校閲
こんにちは、wandervogelのくりもときょうこです。
今日は、原稿整理のかなめである「校正」「校閲」についてお話します。
写真:校正記号の使い方の見本です。赤字を入れることを「入朱」といいます。赤えんぴつか赤い油性ボールペンを使います。フリクションペンを使う方も増えているようですが、高温でインクが透明化するのでゲラや公的な文書には危険です!
まず、このふたつの一般的な違いを見てみましょう。
――ホームページ「違いがわかる事典」より引用
校正とは、誤字や脱字などの文字の誤りを正すこと。
校閲とは、文章や原稿などを読み、内容の正誤や適否を確認する作業のこと。
校閲は校正からさらに踏み込んだ作業ということがわかります。
わたしが勤めていた出版社には、社内に校閲部がありました。
とても重要な仕事ですが、かならずしも出版社内にあるとは限らないのが校閲部です。
特に今は、外注する傾向にあります。
校閲がなぜ重要かというと、表記や内容に間違いのある出版物は信用を損なうからです。
誤字脱字だらけの履歴書では、採用したいという気持ちになれませんよね。それと同じことです。
お代を頂戴する出版物、いえ、ネットでタダで読める文章であっても、間違いがあると信頼度に大きく影響します。
この本は、講談社校閲局が編纂した『日本語の正しい表記と用語の辞典 第三版』です。
社内用に作っていた冊子を、一般の方にも使えるように改訂し、販売しているものです。
こういう指針はあるものの、どう表記するかを決めるのは校閲者ではなく、編集者です。
一般的にとか、原則はこうというのはありますが、その本や原稿の中での表記の統一や方針は編集者が考えなければならないことだからです。
校閲者はまさに職人です。
婦人誌に洋服の型紙を付録としてつけていた時代がありました。
その型紙で実際に洋服を作ってみて誤りや分かりにくい部分を指摘する、ということをやっていた校閲者がかつていたそうです。
仕事とはいえ、頭が下がります。
校閲部門で採用された同期が2人いましたが、慣れてくると、間違いが浮かびあがって見えるようになると言っていました。
目が校閲仕様になるというか、まさに職人の仕事だと感じ入ったものです。
とはいえ、原稿整理自体は本来は編集者の仕事です。
新入社員研修で校閲局の方が「校閲の“閲”の部分は、本当は編集の仕事なんだけどね」「校閲の仕事が増えている」とおっしゃっていました。
刊行点数の増加もありますが、編集者の力量が落ちていること、仕事のやり方が変わってきている、ということを言いたかったのだと思います。
書籍の場合は、入稿前に校閲に話をしておき、初校が出てきたら打ち合わせをしながらゲラを渡します。
*入稿……原稿を印刷所に渡すこと。印刷所で指定通りに版を組みます
*ゲラ……ゲラ刷りの略。校正刷。組んだ版を校正用に刷ったもの。最初に出てくるゲラ
を初校と呼びます。正ゲラ、控えゲラ合わせて3~4部出してもらうことが多
いです
そのときに、原稿を書くにあたって参考にした資料があれば渡します。
校閲者からしてみると、この中で検証すればいいというように範囲が定まっていることは作業効率に大きく影響します。
ものによりますが、資料がまったくないと裏を取るための資料探しからやることになり、時間も手間もかかります。
そもそも、入稿時に編集者がきちんと原稿整理をしておかないと、後々ツケが回ってきます。
編集者が苦労するのは自業自得ですが、校閲者にも多大な迷惑をかけます。
間違いを拾いきれないまま出版するリスクも高まって、いいことはありません。
校閲者の飲み会はきっと、グダグダのゲラを渡す編集者、余裕のない進行が常習化している編集者への怨嗟に満ちていることでしょう。(ゴメンナサイ)
(余談ですが、わたしがいた会社の校閲者は酒好き、それも日本酒好きの人が多かったそうです。しかも、飲み会ではめちゃめちゃ飲む人、荒れる人も多いとか。普段仕事でなかなか飲めないせいか、はたまたストレス発散のためか……)
校閲から戻ってきたゲラには、明らかな間違いは赤字で、矛盾点、内容に関わる部分や念のための確認はえんぴつで指摘が入ってきます。
もう本当に、何度助けてもらったかわかりません。
「こんなところに気づいてくれたんだ……完全に盲点だった」
「こんなことまで調べてくれたんだ!」
と驚くこともしばしばでした。
ゲラは初校、再校と2回は出します。
都度校閲者に見てもらうのですが、それでも納品されてきた見本に間違いを発見してしまうことがあります。
特に誤字。
言い訳がましいですが、誤字は潰しても潰しても湧いて出てくるんですよね……。
見つけた時は、本当に脱力します。
今は、校正・校閲のクレジットのない本も増えています。
ネット上の原稿については、どれだけ校正・校閲を通しているのかさらに心もとないのが現状です。
校閲者の役割の大きさをぜひ知っていただけたらと思います。
最後に、新入社員研修で出た校閲クイズを。
「備前焼は、良質の土を使い、ひとつずつ手作りで成形し、乾燥させてから焼き締めています。土味がよく表れているのが特徴です。形も焼き味も釉薬の変化も、一点も同じものはありません」
間違いを探してみてください。(答えは次回投稿に掲載します)
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